EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 300mm / 絞り優先AE(1/640秒・F7.1・-2/3EV) / ISO 250
現在の旅客機は白い機体がほとんど。機体の白は飛ばさず、機体の下部のシャドウも描写されている。「EOS R5」のダイナミックレンジの広さがうかがえる1枚だ(撮影:ルーク・オザワ)
いま、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」が話題です。時代が一眼レフカメラからミラーレスカメラへと動く中、キヤノンが持つ最新技術とカメラづくりに関するノウハウが詰め込まれた「EOS R5」、その実力はどのようなものでしょうか。
そこで、早くも「EOS R5」を使い込んでいる航空写真家のルーク・オザワさんに、使い勝手や撮影の感触などを聞いてみました。インタビューをまとめた動画も用意しましたので、「EOS R5」に興味のある方はぜひご覧ください。(聞き手:松岡佳枝)
ルーク・オザワ
撮影:加藤丈博
LUKE H.OZAWA
1959年2月東京生まれ。ヒコーキと向き合い47年、これまで手掛けたカレンダーはANAを始め300作になる。風景とヒコーキをシンクロさせた絵づくりに定評がある。生涯飛行搭乗回数2,100回。今年4月・5月・6月・8月の搭乗回数ゼロはフリーになってから30年間で一度も経験がない異常事態。一日も早い日常が戻ることを願うばかりだ。2016年全国カレンダー展では文部科学大臣賞受賞。写真集JETLINERシリーズなど著書多数。
EOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
撮影:加藤丈博
一眼レフカメラからの移行について
——「EOS R」が発売される以前は一眼レフカメラを使っていらっしゃいましたが、移行はスムースでしたか?
以前、僕が撮影している飛行機のような「動き物」はミラーレスでは撮れないと思っていました。だから、そもそもミラーレスを使うこと自体をお断りしていたんです。でも実際に「EOS R」を使ってみると意外と使える!という感じでした。その後、「EOS R」2台で飛行機を撮るようになりました。以降、すべての撮影をミラーレスカメラで行なっていて、僕はいまミラーレスに完全に移行しています。
「EOS R5」に関しては、(EOS Rの発売から)2年の間でここまで進化するか? という充実ぶりです。約4,500万という画素数が大きいですね。僕の撮る飛行機の写真は、風景のなかに飛行機がワンポイントとしてあるようなものも多いのですが、小さい飛行機も高画素機で撮影すると、僕の27インチの4Kモニターで見ても、ピントがバッチリきているんです。
また、約4,500万画素あると、クロップする際にも画素数が約1,700万画素程度とかなり残るのもいいですね。すっかりEOS R5にハマっていますよ。
AFについて
——飛行機の撮影といえばAFが重要になります。「EOS R5」でのAF設定とその印象を教えてください。
これはケースバイケースですね。旅客機というのはある程度動きが予測できる面もあるので、このシーンは1点AFがいいのか、領域拡大AFがいいのかゾーンAFがいいのかなど、判断して撮影しています。動体捕捉性能の精度は「EOS R」からさらに高まっていますね。
——一眼レフカメラでも同じような設定ですか?
一眼レフカメラでは主にワンショットAFで撮影していたのですが、「EOS R5」ではサーボAFがとても優秀なので、ほとんどの撮影をサーボAFで行なっています。シャッターを半押ししてAFをロックオン、そしてシャッターを切った瞬間の捉えた! という気持ちよさは「EOS R5」ならではだと思いますね。
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 400mm / 絞り優先AE(1/640秒・F6.3・-1/3EV) / ISO 400
コクピット付近に合わせたゾーンAFが追従し続けたというシーン(撮影:ルーク・オザワ)
それに「EOS R5」は一眼レフカメラと違い、撮像エリアのほぼ全面にAFポイントがあります。大まかにAFのエリアを動かしたいときには背面モニターのタッチ&ドラッグで操作し、細かく調整したいときにはマルチコントローラーで補います。ファインダーを覗いたまま操作できるのでとても有効に使っています。このマルチコントローラーを押し込むことでセンター戻しができるのも、すごく便利ですね。
——AFエリアの分割数も1,030と細かいですよね。
飛行機を小さく構図に配置した時もきっちりピントが来てくれます。なんで? と思うくらい。ときどき迷うこともありますが、コツさえつかめばまったく問題ありません。
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 500mm / 絞り優先AE(1/500秒・F7.1・-2/3EV) / ISO 400
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 500mm / 絞り優先AE(1/500秒・F7.1・-2/3EV) / ISO 400
小さな機影もロックオンする「EOS R5」のAF性能。ルークさんはタッチ式モニターを利用したタッチ&ドラッグAFでAFエリアを大まかに動かし、マルチコントローラーで微調整するそうだ(撮影:ルーク・オザワ)
連写性能について
——メカシャッターでの最高連写速度も「EOS R」の約8コマ/秒から約12コマ/秒へと強化されています。
一眼レフカメラでも約10コマ/秒以上の連写ほぼ使わなかったのですが、4Kモニターで見ると、ちょっとしたズレ、例えば飛行機の向こう側に空港の車が写ってしまっていたりとか、そういうことに現地では気づけないことがあるんです。でも、約12コマ/秒あると、その次の瞬間が撮れているから撮影後に選びやすい。ただし撮影枚数が増えてしまうので、なるべく抑えてはいますが、使える機能は使っていこうという姿勢です。
——どんなシーンで連写を使用しますか?
飛行機はスピードが速いでしょう? 時速500kmなんて簡単に出ていますから。ここだ! という瞬間は一瞬なんです。そういうシーンでは連写が速い方が有利です。撮りたいシーンを確実に撮ることができるという可能性が高まるのはとてもいいことだと思いますね。
例えば、満月のなかを飛行機が突き抜けている瞬間というのは、あっても2〜3コマ。あっという間にいなくなってしまいます。約12コマ/秒あれば、きれいに収まっているカットが残りやすくなります。でも僕は、飛行機が月に全部入ってきた瞬間からシャッターを切るんです。まあ自分を試しているんですよ(笑)
ベイパーが発生した捉えた瞬間(左)。その一瞬後、ベイパーは消えていた(右)。約12コマ/秒の実力が発揮された瞬間だ(撮影:ルーク・オザワ)
操作性について
——操作性の面で改善されたと感じる点はありますか?
いちばんよくなったと感じるのは立ち上がりの速さですね。スリープから立ち上がる速さが体感として倍以上速くなっていると思います。これまで撮り逃してしまったようなシーンでも、「EOS R5」ならすぐにシャッターを切ることができます。飛行機の撮影では、たった1秒の差でもすごく大きいんです。一眼レフカメラに引けを取らず、ストレスはまったくないです。
それに「EOS R5」ではさまざまな操作部材が改善されています。例えば電源スイッチひとつ取っても、手前に突起がついたことで、触れば爪の位置だけでON/OFFがわかるようになっていますし、サブ電子ダイヤル2の位置も少し手前になって、親指にひっかかりやすく、回しやすくなっています。細かな部分がブラッシュアップされることで、使いやすさも増していますよね。
上面からみた「EOS R5」。「EOS R」と違い、左の電源スイッチに突起がついた。また、右側のMODEボタン周囲のサブ電子ダイヤル2は、撮影者側にシフトしている。
——その他、ミラーレスカメラならではの操作性の良さとはなんでしょう。
ボタンとダイヤルのカスタマイズが幅広くできるのがよいですね。自分なりにカスタマイズして、それを例えば鉄道写真家の長根くん(編集部注:長根広和氏)に渡したとする。そうすると彼はきっと使えないと思います(笑)。逆もしかりです。それくらい、自分なりにいろんなことをいろんな場所に割り当てできます。
僕の場合、ファインダーから目を離さずに、サーボAFからワンショットAFに切り替えたり、フォーカスエリアを切り替えられるように設定しています。とてもラクになりましたし、より撮影に集中できるようになります。
小型軽量ボディについて
——一眼レフカメラより小型軽量化しています。メリットは感じられますか。
すごく大きなポイントですね。地方や海外ロケもあるなかで、いかに機材を小さく軽くするかがひとつのキモになるんですが、ミラーレスカメラを使うようになってから、バッグそのものも軽いものにできるようになったし、もちろん中身も軽くなった。これはすごくいいと思います。
バリアングルモニターについて
——飛行機の撮影でバリアングルモニターは役立つのでしょうか。
菜の花と飛行機を絡めて撮る際など、地べたに自分が寝そべって撮っていましたが、バリアングルモニターなら無理のない姿勢で見て撮ることができます。機内の窓から空を撮ることも多いので、シートベルトをしている状態でも、バリアングルモニターを使えば腕を上げてモニターを見ながら撮れますから、とても重宝していますね。
電子ビューファインダーについて
——「EOS R5」は約576万ドットという高精細な電子ビューファインダーを搭載しています。EVFの見え方はいかがですか?
慣れでもあるでしょうけれど、感覚としてはほぼ一眼レフカメラと変わらないですね。ストレスを感じるようなことはまったくありません。見え方も光学ビューファインダーに近づいてきたのではないでしょうか。ちなみにEVFの表示設定を「なめらかさ優先」にすると、消費電力は上がりますが、すごく見やすくなるのでおすすめです。
——電子ビューファインダーは露出などの撮影設定が表示に反映されます。撮影に影響するものでしょうか。
夕日を入れて飛行機を撮るとき、近くで一眼レフカメラを使っている方は「まぶしい!」とおっしゃるんです。確かに光学ビューファインダーでは強い逆光時に見えづらくなります。電子ビューファインダーでは露出を反映した表示にできるので、そんなことはないですよね。満月も一眼レフカメラのファインダー内は真っ白になってしまいますが、ミラーレスカメラは月のクレーターが最初から見えている。見ながら露出を調整できるんです。露出を変えて撮った写真を見てということを繰りかえす一眼レフカメラよりも、撮りたい写真を早く撮ることができます。
ホワイトバランスをオートから太陽光に変えても、ファインダー内で色が変わるのが見えるわけです。撮りたい色が見えるというのは大きなアドバンテージになります。こうやって現場ですべて作ってしまえるのは、JPEG派の自分にとって便利ですね。
——連写しながら、または流し撮りをしながらの撮影に違和感はありますか?
電子ビューファインダーでの流し撮りは難しいとされてきましたよね。フレームレートの問題なんかもありますし。でもいまは特に問題なくできます。「EOS R5」は1コマ後にブラックアウトしますが、そのあとは連続して見ることができます。
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 363mm / 絞り優先AE(1/30秒・F6.3・-1/3EV) / ISO 6400
流し撮りの例。「EOS R5」にはボディ内手ブレ補正も搭載されている。レンズ側の手ぶれ補正とも協調する(撮影:ルーク・オザワ)
画質について
——約4,500万画素という画素数についてはどのように感じていますか?
描写力がすごく上がったと思います。拡大すると旅客機のリベットまで改造しているのがわかります。ダイナミックレンジも広く、描写に関して不満はありません。
——クロップ時にも約1,700万画素と画素数に余裕がありますが、どのようなシーンでクロップを使われますか?
トリミングをしても十分耐えられるため使い勝手が良くなりました。満月や太陽を絡める時以外に僕はあまりやりませんが、初心者なら広めに撮っておき、家でじっくりトリミングで構図を考えることもできます。こういう余裕があるのはとてもいいことですよね。
僕の場合、これまではクロップ機能ではなくフルサイズとAPS-Cの2台のカメラを撮り分けていました。それが一台に集約されたという感覚です。空港は広く撮れる場所が限られます。クロップ機能があるとこれがある程度クリアできる。APS-Cセンサーのカメラがなくても高画素でクロップできれば、現場でカメラを変える必要もありませんからね。テレコンバーターを使うような場面でも生きてきます。
左がクロップなし焦点距離100mm、右がクロップ後の800mm相当。ISO 6400での撮影だがノイズはほとんど見られない(撮影:ルーク・オザワ)
バッテリーについて
——バッテリーの容量が増加していますが、電池の持ちに関してはいかがでしたか?
日常的に使っていてもバッテリー1個あたり700〜800枚くらいは撮れる印象です。羽田空港で夜、バッテリー残量1%まで1,800枚くらいクロップで撮影できたときは驚きました。僕はバッテリーグリップはつけず、バッテリーの予備を常に携行するのですが、便数の多い空港では予備バッテリーの出番はあっても、地方の空港では1日1本あれば十分撮影できますね。
メモリーカードについて
——「EOS R5」では新しいメモリカード「CFexpress」が採用されました。使っていますか?
はい、プログレードデジタルのCFexpressを使用しています。PCへの落とし込みの速さは目を疑うほどのスピードです。ダブルスロットになったことも「EOS R5」の良いところですね。JPEGラージで記録していますが、CFexpressとSDのダブルスロットに同一書き込みを設定しています。保険という意味ですね。シングルスロットの「EOS R」で書き込みエラーが起きたことはありませんが、やはり2枚使えるという安心感は大きいと思います。
す(笑)
「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」について
——交換レンズの「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」についてお聞かせください。
1998年からずっと「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」を使ってきて、16年経ってII型の「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」がリリースされ、すごく喜んだものです。ところがRFではいきなり100-500mm! 驚きましたね。撮った写真を見ても、解像感もありますし、信頼しています。
現在も人気で入手難のレンズ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」。
テレ端が500mmあると1.4倍のテレコンバーターを使えば800mmになります。100mm伸びると安心感がありますし、新しい絵作りができるようになるんです。本当に理想的ですね。
テレ端ではF7.1になってしまいますが、感度を上げれば問題ありません。高感度はISO 20000くらいまで問題なく使っています。もっと開放値が明るいと、大きく重いレンズになったでしょうし、このサイズになったことで「EOS R5」とのバランスもいいんです。フィルター径がこれまで使ってきたEF100-400mmと同じ77mm径なのも嬉しい仕様でした。僕が良く使うフィルターはPLですね。マルミのEXUSサーキュラーPL Mark IIを愛用しています。
——レンズでもっとも重要視している「機能」「仕様」は何ですか?
防塵防滴でしょうか。雨が降っているときでも撮りますし、着陸の瞬間の水しぶきや雲から抜けてきたときなど、撮りたいシーンを安心して撮影できます。天気が悪いときを狙って撮影に行くのに晴れてしまうということが多いのですが、梅雨時期にはほどよい雨を狙っていくので、濡れても大丈夫というのは強いですね。
ミラーレスカメラを使うこととは
——一眼レフカメラユーザーにとって、ミラーレスカメラへの切り替えはまだ抵抗があるかもしれません。
時代の流れに乗り遅れないためではなく、「ミラーレスカメラで動体はダメだ」というイメージを自分で払拭したいという思いもあってこれまで実証してきました。その結果、いまはもう一眼レフカメラに戻りたいと思わないですね。撮影に行く時にはミラーレスカメラのみを持っていきます。小型軽量化というメリットはもちろんありますが、「EOS R5」なら、これまで以上に撮影に集中できます。
EOS R5 / RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM / 絞り優先AE(1/1600秒・F6.3・-2/3EV) / ISO 400
手前の建物から飛び出した機体を的確に捉えるAF性能。AFエリアの拡大も作画の自由度に寄与しているそうだ(撮影:ルーク・オザワ)
——ミラーレスカメラは進化のたびに機能がどんどん増えていますね。
カメラに任せられるところはカメラに任せる。そうすることで撮影に集中できます。飛行機と同じですね。飛行機もアナログですべて操作していたところから、いまはコンピューターに任せるところは任せて、あとは操縦するだけに集中する。僕はシャッターを押す自分を追い込むだけです。
ただ、いろいろな機能があるので、カメラに何ができるかは勉強しないといけないと思います。僕もまだ80%くらいしか使えていない気がします。使ってみるといろんな発見があって、新しい発見がありますよ。
3名の写真家がEOS R5のリアルを解説!
デジタルカメラマガジン2020年10月号の企画「REAL FOCUS」では、ルーク・オザワさんに加えて柄木孝志さん、戸塚学さんの3名が登場。「EOS R5」で撮影した作品とインプレッションを紹介しています。撮影ジャンルの違う3名が、それぞれの切り口で「EOS R5」を紹介するこの企画、ぜひ手にとってご覧ください。 Amazonで購入:デジタルカメラマガジン2020年10月号
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社
松岡佳枝
関連リンク キヤノン:EOS R5 | 概要 キヤノン:RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM|概要
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